問題内容:パワーエレクトロニクス…単相整流回路
 難易度:★★★☆☆(標準)
目標時間:〜8分

※問題は手元の問題集や電気技術者試験センターの公式サイトで確認下さい。
※以下は個人の解答例です。


【解答】
(a)
パワエレ初心者向けに分かりやすく説明するため、単相サイリスタ全波整流回路の前に、簡単な単相ダイオード半波整流回路から以下のように順を追って説明していく。

 ①単相交流回路
 ②単相ダイオード半波整流回路
 ③単相サイリスタ半波整流回路
 ④単相ダイオード全波整流回路
 ⑤単相サイリスタ全波整流回路
 ⑥単相サイリスタ全波整流回路({small{
m Th_{1}、Th_{4}}}故障時)


①半導体素子のない単純な交流回路(図1)のように正弦波電圧 {small{v_{s}= sqrt {mathstrut 2} V {
m sin} 	heta {
m ~[V]}}} を印加したとき、純抵抗 {small{R{
m ~[Ω]}}} に発生する出力電圧波形 {small{e_{1} {
m ~[V]}}} は図2となる。

f:id:hitorisuto:20170104202413p:plain

図1

f:id:hitorisuto:20170105170120p:plain
図2

※ひねりなしの普通の単相交流回路とその波形です。当然 {small{v_{s} =e_{1} {
m ~[V]}}} となります。


②図1に半導体素子としてダイオード({small{
m D}})を追加した単相ダイオード半波整流回路(図3)について考える。

ダイオード({small{color {red} {
m D}}})には整流作用があり、順方向電流しか流れず逆方向電流は流れない
そのため、出力電圧波形 {small{e_{2} {
m ~[V]}}} は、順方向(正)のみとなり、逆方向(負)の波形は出力されず、図4となる。

f:id:hitorisuto:20170104202534p:plain
図3 単相ダイオード半波整流回路

f:id:hitorisuto:20170105170133p:plain
図4


③図3の半導体素子のダイオード({small{
m D}})をサイリスタ({small{
m Th}})に変換した単相サイリスタ半波整流回路(図5)について考える。

サイリスタ({small{
m Th}})では逆方向電流はダイオード({small{
m D}})と同様に流れない
しかし、順方向電流はゲートに信号が加われば流れ(オン状態)ゲートに信号がなければ流れない(オフ状態)


※オフ→オン状態へ切り替わることを点弧(ターンオン)、オン→オフ状態へ切り替わることを消弧(ターンオフ)といい、ゲートに信号が加わる角度 {small{alpha }} を制御角(制御遅れ角、点弧角)といいます。

そのため、制御角が {small{alpha = frac{π} {2} {
m ~[rad]} }} のときの出力電圧波形 {small{e_{3} {
m ~[V]}}} は図6となる。

f:id:hitorisuto:20170104202555p:plain
図5 単相サイリスタ半波整流回路

f:id:hitorisuto:20170105170145p:plain
図6

※負荷が純抵抗 {small{R{
m ~[Ω]}}} 以外にインダクタンス {small{L{
m ~[H]}}} がある場合や他にも色々な単相半波整流回路がありますが、問題は純抵抗 {small{R{
m ~[Ω]}}} のみなので、今回はここまでにしておきます。

※単相半波整流回路の出力電圧波形については分かって貰えたと思うので、次は問題で問われている単相全波整流回路について考えます。


④半導体素子がダイオード({small{
m D}})のときの単相ダイオード全波整流回路では、順方向電流時は図7のようにダイオード {small{
m D_{1}}}{small{
m D_{4}}}が導通し、逆方向電流時は図8のようにダイオード {small{
m D_{2}}}{small{
m D_{3}}}が導通する。

そのため、純抵抗 {small{R{
m ~[Ω]}}} での出力電圧波形 {small{e_{4} {
m ~[V]}}} は図9のように常に正方向の波形が出力される。

f:id:hitorisuto:20170104202655p:plain
図7 単相ダイオード全波整流回路(順方向電流時)

f:id:hitorisuto:20170104202707p:plain
図8 単相ダイオード全波整流回路(逆方向電流時)

f:id:hitorisuto:20170105170158p:plain
図9


⑤図7と図8の半導体素子をサイリスタ({small{
m Th}})に変換した、単相サイリスタ全波整流回路(図10)について考える。
(電流の流れる方向は図7と図8と等しいため、図はまとめて一つの図10にする。)

サイリスタ {small{
m Th_{1}〜Th_{4}}}の制御角が {small{alpha = frac{π} {2} {
m ~[rad]} }} のときの出力電圧波形 {small{e_{5} {
m ~[V]}}} は図11となる。

f:id:hitorisuto:20170104202733p:plain
図10 単相サイリスタ全波整流回路

f:id:hitorisuto:20170105170212p:plain
図11

図11の出力電圧波形 {small{e_{5} {
m ~[V]}}} より、「正しく {small{
m T_{1}〜T_{4}}}にゲート信号が与えられた場合の出力電圧波形 {small{e_{d2} {
m ~[V]}}}」は選択肢の波形2となる。


⑥図10において、サイリスタ {small{
m T_{1}}}{small{
m T_{4}}}のゲート信号が全く与えられなかった場合の出力電圧波形 {small{e_{6} {
m ~[V]}}} について考える。

図11の {small{e_{5} {
m ~[V]}}} の波形において、ゲート信号が与えられていない {small{
m T_{1}}}{small{
m T_{4}}}常にオフ状態にすれば良いため、出力電圧波形 {small{e_{6} {
m ~[V]}}} は図12となる。

f:id:hitorisuto:20170105170223p:plain
図12

図12の出力電圧波形 {small{e_{6} {
m ~[V]}}} より、「{small{
m T_{2}}}及び {small{
m T_{3}}}のゲート信号は正しく与えられたが、{small{
m T_{1}}}及び {small{
m T_{4}}}のゲート信号が全く与えられなかった場合の出力電圧波形 {small{e_{d1} {
m ~[V]}}}」は選択肢の波形3となり、答えは(5)となる。


※回路と波形の暗記だけでは(a)の出力電圧波形 {small{e_{d1} {
m ~[V]}}}」は解けません。純抵抗であれば半導体素子によらず(ダイオードでもサイリスタでも)、単相半波も単相全波も波形はそこまで難しくはないので、書けるようにしましょう。


(b)
出力電圧波形 {small{e_{d2} {
m ~[V]}}} は図11の出力電圧波形 {small{e_{5} {
m ~[V]}}} の制御角を {small{alpha {
m ~[rad]}}} とした図13より、その平均値 {small{E_{d} {
m ~[V]}}} を求める。

f:id:hitorisuto:20170105173734p:plain
図13

図13より、{small{e_{d2} {
m ~[V]}}} の波形は {small{	heta =alpha {
m ~[rad]}}} から {small{	heta =π {
m ~[rad]}}} までは {small{v_{s} {
m ~[V]}}} と等しいため、{small{v_{s} {
m ~[V]}}}{small{alpha ~〜~ π}} 区間で積分し、{small{π}} で割れば、出力電圧波形 {small{e_{d2} {
m ~[V]}}} の平均値 {small{E_{d} {
m ~[V]}}} が求められる。
{small{π~〜~2π}} 区間は {small{0~〜~π}} 区間と同じため、平均値を求める場合は {small{alpha ~〜~ π}} 区間のみで考えることができる。)

 {egin {eqnarray} E_{d} &=& dfrac{1} {π} int_{alpha }^{π } v_{s}・d 	heta  &=& dfrac{1} {π} int_{alpha }^{π } sqrt {mathstrut 2}V sin 	heta ・d 	heta  &=& dfrac{sqrt {mathstrut 2}V} {π} int_{alpha }^{pi } sin 	heta ・d 	heta  &=& dfrac{sqrt {mathstrut 2}V} {π} Bigl[ -cos Bigr]_{alpha }^{pi }  &=&  dfrac{sqrt {mathstrut 2}V} {π} Bigl{(-cos pi )-(-cos alpha )Bigr}  &=&  dfrac{sqrt {mathstrut 2}V} {π} (1+cos alpha )  &fallingdotseq & 0.45V(1+cos alpha )  &=& 0.9V dfrac{1+cos alpha } {2}{
m ~[V]}…(答)  &→& (2)  end{eqnarray}}

以上。


※式の丸暗記に頼るとパワエレは似たような式ばかりで混同してしまうため、出来る方は導出を理解した方が確実です。(三角関数の積分が入ってくるので三種レベルではないですが…。)


【類題】
・H24年問10、22年問16
H28の問題は平滑リアクトル {small{L{
m ~[H]}}} や平滑コンデンサ {small{C{
m ~[F]}}} のない純抵抗 {small{R{
m ~[Ω]}}} のみの回路であり、例年のパワエレの問題と比べるとシンプルな問題です。

(b)は導出(積分)が出来るか、もしくは式を暗記(おすすめしませんが…)していなければ解けませんが、(a)の波形を選択するレベルの問題は解けるようになりましょう。

【ひとコト】
パワエレは素子、回路、波形、式(積分含む)をセットで理解しないと本質的な理解ができないため、経験がないととっつきづらい分野です。

そのため難しい分野になりますが、最近の過去問では3問出題される年もあり、丸々捨てることができないのも現状です。

戦略としては、頻出回路の波形と式の導出をセットで理解することがベストですが、積分を含んだ式の導出が苦手な方はまず半導体素子の概要や回路とその波形から勉強することをお勧めします。

とは言え、機械は出題分野が広いので、まずは他科目との繋がりが大きい変圧器・誘導機・直流機・同期機を徹底的に勉強することが重要です。




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・電験3種 平成28年 機械 問15

・電験3種 平成28年 機械 問17